目次
1. 中小企業の省エネへの対策・取り組みとは
近年の地球温暖化・環境破壊への危機感から、「京都議定書」以後の2015年のパリ協定では、発展途上国も含めた世界全体での温室効果ガス削減の機運が高まっております。
中小企業は大手企業のように企業ブランド・社会貢献の為の省エネというよりは今後の企業存続の為の省エネ、つまりコスト削減に重きをおいた省エネの比重が大きいと思われます。
中小企業は投資費用をかけづらいため、投資効率の良い、投資回収の早い省エネを選択する傾向が高く、今後も益々その傾向は強まると思われます。
1.1 企業が省エネに取り組む必要性・背景
IS014001(環境マネジメントシステム)や省エネ法(エネルギーの使用の合理化等に関する法律)や温対法(地球温暖化対策の推進に関する法律)等で一定(1,500kl/年以上のエネルギー使用量合計)量以上のエネルギー使用業者への報告義務、排出ガス削減努力が求められています。
また大手企業にはCO2削減、化石燃料使用の低減が求められていますが、中小企業にも大手の取引先よりそのサプライチェーン内のCO2削減の為、同様に削減・報告を求められることも多くなってきています。
そのような義務的なものとは逆にJ−クレジット制度(※1)により省エネにより削減されたCO2の排出分を売却し、売却益を得て投資費用の回収や更なる省エネ活動に活用できるようにもなってきました。
*1 J−クレジット制度…省エネルギー機器の導入や森林経営などの取組による、CO2などの温室効果ガスの排出削減量や吸収量を「クレジット」として国が認証する制度です。
J−クレジット制度について詳しい内容はこちら:https://japancredit.go.jp
コスト削減の面においても、製造業での生産効率、人件費等のコスト削減はこの数十年のうちにかなり進み取り組むべき余地があまり残されていない状況です。それに反し、省エネ分野ではその余地はまだまだ残されているのです。
では、省エネのコスト削減として電気料金を考えてみましょう。
まず、電気料金の詳しい計算方法をみてみましょう。
電気料金は「基本料金」と「電力料料金」の合計額に「再生可能エネルギー発電促進賦課金」を加えたものになります。
参考:中部電力ミライズ 電気料金の計算方法算https://miraiz.chuden.co.jp/business/electric/contract/factory/hi_price/calculation/index.html
そして、電気料金単価は下記グラフのように上昇傾向にあります。
更に今後は、太陽光発電の増加により賦課金(再生可能エネルギー発電促進賦課金)が減少することなく増加していくことが予想されます。
実際、上記グラフのように2012年には0.22円/kWhであった賦課金が、2020年には2.98円/kWhとなり、2.78円/kWh増加しています。
では、賦課金の増加がどのくらい電気料金に影響するか、下記の例を見てみましょう。
電気使用量:64,700kw/月 電気使用料金:120万円/月の場合
2.78円/kwh × 64,700kw/月 =179,841円
179,841/月 ÷ 120万円/月 = 約15%
なんとこの会社のケースでは、約15%の約18万円/月もコスト増になっています。
実際には下記のように燃料調整単価がマイナス4円/kWhの為、賦課金増加分以上になり、電気料金の低減メリットがでておりますが、燃料調整単価は数年前まではプラス2円/ kWh位でしたし、賦課金は今後下がることなく増加しますので、省エネの必要性は益々コストの面でも重要になっていきます。
中部電力ミライズ参照:https://miraiz.chuden.co.jp/info/press/1206205_1938.html
このことからも分かるように、以前にも増して中小企業も省エネ対策に取り組まざる得ない状況になってきております。
1.2 SDGSと省エネ
SDGS(エス・ディー・ジーズ:持続可能な開発目標)とは国連サミットで採択された2030年までに持続可能でより良い世界を目指す国際目標です。
SDGSには17項目の目標があります。
その中で、7番の「エネルギーをみんなにそしてグリーンに」と13番の「気候変動に具体的な対策を」が省エネに関する項目になっています。
環境省の「SDGS実施指針」優先課題⑤では省エネ・再エネ、気候変動対策、循環型社会が主な取組として掲げられていて、省エネに関しては気候変動影響評価・適応推進を実施するのに加え、下記の対策に注力していくことになっています。
- 徹底した省エネ・・・省エネ法・建築物省エネ法による規制と共に省エネ投資促進への補助金等の支援にて推進強化。
- 再エネの導入促進・・・改正FIT法にて再生可能エネルギーの導入拡大と投資負担軽減を狙い、系統制約の克服、規制緩和、研究開発等の実施をするとともに様々な予算措置を実施。
外務省HP参照:https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/index.html
1.3 かんたんに出来る省エネの取り組みとは
かんたんにできる省エネの取り組みを3つご紹介します。
1. 使う時だけ電気・水道を使用
2. 空調温度を上げる
3. コンセントをこまめに抜く
この3項目が一般的にはよく知られた省エネ対策になるかと思います。
できることからなんらかの行動する、対策を打っていくことは大切なことです。
1.3.1 使う時だけ電気・水道を使用
事務所等や工場等で休憩中に消灯して電気を使わない、という光景をよく目にします。もしくは直管式蛍光灯2灯のうち、1灯を外して1灯分の電気代を減らしているというケースも多々あると思います。当然その分省エネになります。
しかし、蛍光灯に比べ10倍前後の消費電力になる水銀灯はというと、一度点灯してから再点灯までには20分〜30分くらいの時間が必要となるため、昼食以外の小休憩で消灯するるのは難しく、昼の一時間の休憩でも丸々消灯というわけにはいきません。
またランプを間引いたりして省エネする場合にも、環境ごとに適正な照度(lX)がJIS規格により決められていますので、暗くなり過ぎるのは労働環境の面から好ましく有りません。
参照:平成23年6月1日 経済産業省産業技術環境局 環境生活標準化推進室 JIS Z9110(照明基準総則)の改正について(周知)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/electricity_supply/0617shodoshuchi.pdf
水道も使わない時は使わない、流しっ放しにしないよう注意することも必要です。
センサーやタイマーで使う時だけ流れるようにする対策も、その対策費用を上回る額の水道代を減らすことができるのであれば検討の余地があります。
1.3.2 空調の温度を上げる
冷房時にエアコンの設定温度を一度上げれば約10%の省エネ効果があるとされています。
但し暑い時に無理に設定温度を上げて我慢していると熱中症等の体調不良をおこしてしまったり、オフィス等で熱くて、集中して仕事に取り組めずかえって残業でエアコン稼働時間が伸びて電気代や残業代が増えてしまったりでは本末転倒です。適宜その場の状況を見ながらエアコンの電気代以外のことも考慮しなければなりません。
夏場であれば空気の循環装置やサーキュレーターで気流を作り体感温度を下げたり、室内の上下の温度ムラを解消してエアコンの効きを良くするなどの対策が効果的です。
冬場であれば加湿機を使って低くなりがちな湿度を上げると体感温度は2〜3度は上がります。加湿器の消費電力はエアコンに比べて非常に低いので効果的です。
またエアコンのフィルターや熱交換器の清掃はエアコン能力を回復させ、室外機の風通しを良くすることで本来のエアコンの能力が発揮しやすくなり効果的です。
1.3.3 コンセントをこまめに抜く
最近の機器は省エネ化が進み待機電力も少なくなった為あまり意味がないという意見も有りますが、その行為自体にあまり労力が掛からず安易できるのなら「塵も積もれば山となる」でやって意味がないことはないと思います。
但し、家庭に比べて事業所ではなかなか切れる機器も少ない場合もあるので確認して実施して下さい。またコンセントを抜くというよりはタップを使って入り切りすることで便利で実施しやすくなります。
2. 省エネを意識するポイントはやはりライフライン[電気・水道・重油・ガス]
今まで述べてきましたことはかんたんにできる省エネということで、ぜひ実施していただきたいことですが、全体からみた効果でいえば微微たるもので目に見える省エネ効果は期待できません。省エネを強力に推し進めて大きな成果を得る為にはまた別の必要があります。
但しいくら省エネ効果が高くても、多大な投資費用が掛かってしまうようではなかなか導入に踏み切れず、世の中になかなか広まっていきません。
そこで、どのような省エネが効果的かつ取り組みやすいかをみていきましょう。
2.1 照明(LED)の省エネ
LED照明は5・6年前までは高価で今ほどの能力(明るさ・消費電力)がなかった為に一部の事業所のみが有効でした。しかし近頃は能力が上がりながら、従来の蛍光灯や水銀灯の値段にも近づくほど導入しやすい環境となりました。
分かりやすく大雑把に言いますと以前なら1日に15時間位の点灯状況で3年〜3.5年ほどの投資回収でしたが、今では10時間位でも同様の投資回収になっています。
また、LEDは一般的な蛍光灯と比べ3〜5倍ほどの定格寿命で、4万時間以上の長寿命となっており、ランプの交換の手間や代金を減らすことができます。特に高所や交換が困難な場所において交換頻度を減らせることは、大変メリットが有ります。
省エネ効果としては60%〜80%の削減となり、電気料金・CO2削減においても大きな貢献となります。
但し、以前ほどではないですが下記のような問題も発生するので、導入に際してはランプ・施工の選定には注意が必要となります。
*眩しい感じになり、目が疲れる
*光が広がらず、明るさがまばらになってしまう
*飲食店やスーパー等で光の状況で魚や肉の鮮度が悪く見えてしまう
*LEDにしたのによく切れる。保証期間でランプを交換してもらえたが工事は保証してもらえずかえって費用が掛かった。
*高温の環境のせいか、長寿命をうたっているのにそこまでもたない
*電気料金削減の効果がはっきりとあらわれない
*主要部材のポリカの部分が腐食してきて、ランプ寿命以前にランプ自体が破損し壊れた
しろまた上記により天井からランプが落下してきて危険である(実際の話です)
*看板の中の蛍光灯をLEDに変えたらランプの筋のような光のラインができて不格好である
2.2 空調の省エネ
空調の消費電力は、建物全体の電力消費うち約40%を占めると言われています。比重が多く、且つほとんどの事業所に設置されていることから、省エネ対策では大きなポイントになります。
冬場・夏場の電気料金が春・秋に比べて多いのは、ほとんどが空調の電力消費がその時期になると大きいからです。
大雑把に言うとその差額分が空調の電気代になります。また基本料金もその年間のピーク時の30分の最大電力(デマンド)によって決まるので、基本料金削減の面からも空調の電力を削減するメリットは大きいのです。
15年前ですとデマンドコントローラと言われる空調のコンプレッサーをプログラム制御でON-OFFにして消費電力を減らす対策が有効でした。しかし、その後夏の暑さも上昇し続けて、制御することによって暑さに耐えづらい環境となり普及はあまり進まなくなりました。
その後その暑さ解消の為、室外機に水をかけて熱交換器の温度上昇を抑え、空調負荷を抑える対策を試みましたが、投資金額が多大で且つ電気料金が削減されるものの水道料金が上昇するということもあり、うまくいきませんでした。
その対策として、水ではなくミスト化することにより水の使用量を大幅に抑え、それによって水の配管も小さく、簡素化したことで上記の課題は解決されました。しかし、熱交換器にミスト(水)に含まれるカルシウム等が付着してしまうことから、今はあまりお勧めしておりません。
またその後、冷媒ガスを自然冷媒に替えて約30%削減する対策を実施しましたが、メーカーからの反対もあり今は実施していません。
今は室内機の熱交換器とフィルターとの間にCONTINEWM(コンティニューム)というセラミックのシート状のものを設置する対策を勧めています。エアコン稼働時に発生する帯電を低減させ、本来の空調能力を回復させるというものです。
改造なども伴わず、手軽に導入でき、メーカーの反対もありません。メリットが多く、デメリット・リスクが生じにくくお勧めです。
→CONTINEWM(コンティニューム)について詳しく知りたい方はここをクリック
2.3 冷蔵庫・冷凍庫の省エネ
業務用冷蔵庫・冷凍庫でかんたんにできる省エネとしては、開け閉めの回数を減らす、食品等を詰めすぎない、暖かい状態のまま入れず温度がある程度低下してから入れる、等になります。
その次の対策としては冷蔵庫・冷凍庫の設置場所の温度が高くならないように断熱・遮熱対策をします。
屋根や室内の断熱・遮熱コーティングをしたり、断熱・遮熱シートを設置場所の状況に応じて施工をすれば、庫内の温度がある程度低い状況ならば冷蔵・冷凍の為に稼働するコンプレッサー(圧縮機)の稼働を抑えられ、その分が省エネ効果となります。
古い冷蔵庫・冷凍庫の場合では機器のリニューアルにも効果あります。
下記のホシザキ電機のHPによりますと2005年当時のインバーター制御未搭載の機器に比べ、2011年発売のインバーター制御搭載の機器では約60%の年間消費電力量の削減、2018年発売の機器では更に11%の削減となるとのことです。
但し、リニューアルには大きな投資が必要となりますので、機器の寿命・故障以外の交換時以外ではその削減効果と投資費用、投資効率を考慮して検討する必要があります。
ホシザキ電機HPより: https://www.hoshizaki.co.jp/p/f-refrigerator/table/eco.html
2.4 ボイラー・給湯器関係の省エネ
ボイラーの省エネも上記同様、リニューアル以外に適正な空気比となるように管理する、スチームトラップの適正な管理をする、バルブや配管の熱漏れを保温施工によって防ぐ等があります。
重油・灯油等の液体燃料であれば、燃料を改質して8%〜20%程削減するという方法も投資回収が良く有効です。
→重油・灯油等の液体燃料の削減について詳しく知りたい方はここをクリック
またガス(都市ガス・プロパンガス)の場合は燃焼時に必要となる空気を改質することで7%〜15%の削減効果が可能です。重油・灯油の場合も燃焼時には空気が必要となり、同様に省エネ効果を発揮して10%〜15%程の省エネ効果を発揮します。
→ガス・重油・灯油等の燃料削減について詳しく知り合い方はここをクリック
2.5 受変電設備(キュービクル)の省エネ
割合はかなり少ないですがまれに力率が100%でない事業所があります。電力会社からの電気料金請求書に明記されています。100%以外ですと基本料金の割引が受けられなくなっており、その場合はコンデンサを設置して改善する必要があります。
受変電室の基準温度は40℃以下ですが、それ以上の場合変圧器(トランス)の温度上昇により電気抵抗が増えるので、温度管理も必要となります。
2005年以前の変圧器の場合に比べてトップランナーの変圧器は無負荷損、負荷損が大幅に改善されています。
但し、投資費用に比べて省エネ効果(金額)は比較的低く、投資回収期間は長くなる傾向がありますので、受変電設備の更新時に投資金額や省エネ効果を勘案して検討されると良いでしょう。
2.6 圧縮機の省エネ
直ぐにできることとしては、エア漏れがないかの確認です。設備が稼働していない休日や始業前、就業後にエア漏れの音がしないかで確認できます。
他には不必要な圧力設定になっていないか、低減できるなら吐出圧を下げる、乾燥した低い温度で取り込んだ空気の方が効率が良くなるので設置環境の確認・検討も有効です。
インバーター方式の機器への変更や更には生産設備の状況に応じた必要な能力・台数に自動運転する台数制御の採用により高い省エネ効果となります。
2.7 排水処理の省エネ
主な電力消費はブロアポンプによります。
曝気槽の状態に合わせてポンプの能力を自動で制御することで、必要以外の電力消費を抑えて省エネとなります。
2.8 製造機械の省エネ
工作機械、プラスチック加工機械、プレス機、印刷機械、ダイカストマシン等の製造機械への省エネ対策は今まで述べてきたようなリーニューアル以外での省エネが難しく、その機器単独の補助金や若しくは複合的な設備導入による補助金の活用によって投資回収を良くして導入するのが良いと思います。
3. 省エネのスタートは診断から!まずは無料診断からスタート!
今までに述べてきましたように省エネ対策は各業種や建物ごと、使用状況や環境、事業所ごとの課題・悩み・目的・重視すべき価値観も異なります。
どこをどのように対策したら効果的なのか、どれくらいの効果が見込めて、導入費用はいくらかかるのか、またリスクやデメリットの可能性はどうなのか、色々把握したいことはあるかと思います。
その場合に机上の理論だけでなく、実際に多くの診断実績により多種多様な経験とノウハウが必要になります。
例えば電気関係の分野にしかノウハウ・経験がない企業から建物全体の省エネ診断を受け、電気も燃料も水道も同等の削減効果(金額・CO2削減)と診断されたとします。
しかし同じ削減効果でも電気での投資回収が5年に対して燃料や水道関係での投資回収が1年半という可能性を探る、ノウハウ・経験が無いため、LEDへの更新や空調の省エネなどの限られた省エネが対象となってしまいます。
すなわち、建物全体での正しい診断結果を受け取ることはできないのです。
わかりやすくお医者さんに例えると「診察して癌を発見したが、治療はできない。治療は治療できるお医者さんでお願いします」と言われたようなもので、なんとも心もとないと思います。
株式会社ジャストエナジーは、中小企業のための省エネ・コスト削減・環境改善を支援しています。
すでに省エネ・環境改善事業者として15年以上の実績をもち、過去に対応した事業者は累計500か所突破、設備不具合率0%、省エネ実現率99%以上の実績あり。空調や動力での電力削減や節水システム、環境改善(防汚・防錆・劣化防止)、燃料代削減など事業所の省エネをお考えなら、ぜひ一度ご相談ください。
すでに省エネ効果が確認された50種類以上の省エネ商品から最適なプランをご提案します。現地調査やヒアリング、収集されたデータから省エネ計算の根拠と想定値を明確に提示し、不明点に関してもご納得いただけるまでご説明いたします。
省エネ補助金に関してのご相談も受け付けていますので、お気軽にお問合せください。