目次
1. そもそもBCP対策とは
BCP対策とは(Business Continuity Planの略:事業継続計画)の略ですが、その意味は「企業が突然の災害に見舞われたとき、その中核となる事業をいかに早く復旧させ、事業を継続させるかどうかを事前に取り決め、計画書として作成しておくこと」です。
大災害はいつ襲ってくるのか予想することができません。そのため不測の事態に備えて、しっかり事業の復旧・継続計画を作成しておくことが大切です。
1.1. なぜBCP対策が必要なのか
大地震、津波、大型台風、大雨による被害、火山爆発など、日本には多くの自然災害リスクがあります。とくに2010年に発生した東日本大震災では、大規模な揺れやその後の大津波、火災などで15,786人もの方が亡くなりました。
しかし恐ろしいことに大地震リスクはこれで終わりではなく、南海トラフ巨大地震、首都直下地震の危険が切迫していると指摘されています。[※1]
これら大震災による破壊や津波、火災などの被害は企業活動になにかしら損害を与えることは間違いありません。
自然災害だけではなく、テロ攻撃(サイバーテロも含む)、システム障害、感染症により従業員の大半が出社できなくなるなどの事態も企業活動に大きな影響を与えます。大地震やテロ攻撃、システム障害などは台風のように事前に予測ができないため、不測の事態に企業としていかに備えるかが大事になります。
BCPとは緊急事態が発生したときに事業資産の損害をできるだけ最小限にとどめ、コアとなる事業の早期復旧、また事業継続のため段取りやその手法を計画書としてまとめることです。
平時からBCPを作成し、事前準備を入念におこなうことは「リスクに対しての準備ができている」と外部から評価され、それが企業そのものの価値を押し上げます。
1.1.1. 従業員を守る為
BCPの策定により、緊急時に優先して復旧させる中核事業を決め、復旧にかかる時間や復旧プロセスを決定していれば緊急事態による影響にうろたえることはありません。決められた手順で事業を復旧させることができ、いち早く従業員を仕事に復帰させることができます。
緊急事態により事業が立ち行かなくなれば、また普及が遅れれば遅れるほど従業員は心理的に不安になり、また経済的にも困窮します。BCPを事前に作成し、平時から準備をしていれば従業員の生活を守ることにつながるのです。
1.1.2. 事業存続の為
企業が大地震など大きな緊急事態に遭遇すると、その直後から甚大な影響を受けます。操業率が0%にまで低下し事業の普及が遅れる、またそのまま復旧できずに廃業するリスクもあります。
BCPを導入している企業は不測の事態が起きても中核事業の早期復旧や維持ができるため、ほかの企業がダメージを受けても操業率を素早く上げることができ、事業を存続できる可能性が大きくあがります。運用によっては事業を拡大することができるかもしれません。
1.1.3. クライアントの為
大地震やテロ攻撃などの緊急事態が起きると、多くの企業に影響がでます。どの企業にもダメージが及んでいるなか、BCPの手順にそって素早く事業を復帰させることができればクライアントの事業にも影響を与えにくくなり「この非常時に事業の復帰が早い」と信頼が高まります。
またほかの企業との連携も可能になります。BCPによりダメージから素早く復帰できれば同業他社、また取引している企業同士で支援をおこなうことができ助け合える点も大きなメリットです。
1.1.4. 地域社会を守る為
大地震や津波などでは広範囲が影響を受けます。ダメージを負った地域社会のなかでいち早く事業を復帰させれば企業自体のプラスになるのはもちろん、地域社会に対しても貢献できます。
地元の方が従業員の多くを占めていれば職場が再開することで給与が得られますし、そのお金が地域に還元されるでしょう。また取引先に地元企業が多ければそれら企業を守ることにもつながります。
ほかにも、納税を地元にしていれば税金という形で地域にお金を還元できます。地域社会のために企業や事業所が果たす役割は大きいのです。
1.2. 必要なマニュアルとは
BCP(事業継続計画)に単純に「興味がある」だけでは意味がありません。具体的な事業継続計画書を作成する必要があります。
マニュアルの作成には1週間、2週間とまとまった時間が必要なわけではなく、ツボを押さえれば短時間で作ることができます。また一度の作成で完璧な計画書ができるわけではなく、その後何度も手直しをすることで完成していくものです。
「よし!BCPを作成するぞ!」と決めたら、まずは内容のレベルはとにかく、最後まで作りきることが大切です。内容に問題があればその都度訂正していけばよいのですから。
また大事なことはBPC作成後、その存在を隠すのではなく会社の役員や従業員に告知し、事前準備や緊急時の対応などを打ちあわせしておくことです。
1.2.1. 自然災害の場合
大地震や津波、それにともなう火災、また大型台風などによる被害により事業が大きなダメージを負った場合、まずは以下のような対策が必要です。
- ハードウエア対策
災害時の避難計画・従業員の連絡先リスト作成・ハザードマップの確認・避難訓練の実施・避難策確保 など
- ソフトウエア対策
事業所(工場や施設など)の施設耐震化・防災用品の準備・機械や大きな棚などの固定(地震対策) など
これら対策は自然災害による被害を抑えるため、かなり重要になります。さらに…
- 事業所が被災し使用できない場合、代替えとなる事務所や工場の事前選定
- 重要商品(サービス)の確保
- 緊急時の責任者を選定する
- 通信手段や各種インフラの確保
- 資金の確保(損害保険の確認)
これらの項目に対して計画が必要です。もちろん計画を立てただけでは意味がなく、具体的な行動フローや責任者選定、事前準備が必要になります。
1.2.2. 外部的要因の場合
外部的要因とはテロ攻撃(サイバー攻撃)、戦争、システム障害といった、企業の外部に起因する要因で事業にダメージが及んだ場合、どのようなBCPを作成すればいいのでしょうか?以下のような内容について、具体的にBCPを作成します。
- 復旧対応
社内のサーバーなど事業用の機器が影響を受けたときに、いかに素早く復旧させるか、その手順書
- 後方支援
負傷した従業員への対応、従業員との安否確認、食料の手配など
- 財務管理
設備や工場などの復旧にかかる費用をどこから調達するか、また決済方法
- 外部対応
取引先や協力会社との連絡のための責任者選定、地元企業との連絡先確認など
サイバー攻撃は被害が局所的ですが、戦争やテロ攻撃となるとまずは従業員の安全確保が重要です。またすべての指令はトップダウンで素早く行う必要があるため、指揮命令系統をはっきりさせておく必要があります。
1.2.3. 内部対策要因の場合
内部要因対策とは、従業員の意識が低くBCPに対して取り組み方が甘い、周知徹底できないケースです。「自然災害やテロなど起きない」と従業員が考えているとBCPはうまく機能しません。
この場合まずはBCPがいかに企業の復旧や地域社会、また従業員のために役立つものなのか?という点から具体的に説明しなければなりません。自然災害のリスクを説明するためにハザードマップや過去に起きた自然災害の例なども必要でしょう。
事業が素早く復帰できれば従業員が受けるメリットはかなり大きくなります(経済的・精神的に)。まずはどのようなメリットがあるのかをしっかり説明し、どのような準備が必要なのか、そのためにどう行動するかを説明しておきましょう。
2. 中小企業のBCP対策の懸念点
中小企業よりも大企業の方がBCPを策定しているところが多いという統計があります。なぜ中小企業はBCP策定率が低いのでしょうか?
そこには中小企業ならではのさまざまな理由があります。それを一つずつチェックしてみましょう。
2.1. リソースの問題
中小企業の場合従業員の数が限られるため「BPCを作成するために必要なスキルやノウハウがない」「計画策定をする人材がいない」という理由で放置される例が多いようです。またBPCを策定できたとしても、具体的な行動に移せていない、事前の準備ができていないというケースもあります。
中小企業の場合、BPCを積極的に進める人材がいない、企業として余力がないことが大きな足かせになっています。具体的にBPCの策定を考えているのであれば、コンサルティング企業などに委託、またアドバイスを受ける方法もあります。
2.2. 設備・施設の問題
大地震や大型台風などでの風水害で設備などが被災してしまった場合、代替えの設備や事務所、生産拠点を用意することは財政基盤の弱い中小企業には難しいはずです。また実際に以下のような問題点を指摘する声もありました。
- 地震対策のために機械を固定すると、機械の配置換えができない(工場の面積にゆとりがない)
- 耐震化が大事」というが、工場を耐震化するための費用がない
経済的基盤が弱いため、BPCを策定しても実行できない、設備にゆとりがないなどの問題があげられます。
2.3. 体制の問題
緊急事態が起きたとき、設備や施設の復旧対応や後方支援、外部への対応、財務支援などさまざまな対応をしなければなりません。従業員の数が少ない中小企業ではできることも限られますし、復旧に時間がかかることも考えられます。
不測の事態にそなえて体制を作ろうとしても人員が少ないため一人で多くの仕事をしなければならず、いざというときにうまく機能しない可能性もあります。限られた従業員や役員に負担がかかるリスクもあり、体制を作ったあとにしっかりとした事前訓練が必要になるでしょう。
2.4. 情報の問題
中小企業の場合人的リソースに制限があるため、BPCそのものを策定できない、作成に時間がかかるなどの問題がありました。それ以外にも「自治体の窓口がどこなのかわからない・助成金制度や税制優遇措置などがわからない」など、BPCの策定や実行のための情報がスムーズにキャッチできない、情報が周知されていないなどの問題もあります。
とくに中小企業ではIT化が遅れている、従業員の数が少ないなどの理由でBCP関連の情報を探せない、探しにくいという問題があります。
3. よく間違えがちなBCP対策と防災対策との違い
BCP対策と防災対策は同じようなものだと考えがちですが、両者の間には大きな差があります。BCPの目的は事業の継続ですが、防災対策は自社現物資産(事務所や設備、施設など)の保護がメインになっています。
防災対策は自然災害に対する備えですがBPC対策は自然災害はもちろん、テロ攻撃やウイルス感染(従業員の)、原子力事故などありとあらゆる非常事態に対応しています。
つまり防災対策はBCP対策の一部なのです。
BCP対策 | 防災対策 | |
---|---|---|
対 象 | 自然災害・テロ攻撃・原子力事故など | 自然災害のみ |
目 的 | 事業の継続 | 自社現物資産の保護 |
適用範囲 | 事業単位(自社にくわえて取引先や組合なども) | 拠点範囲 |
内 容 | 防災対策に加えて代替手段の選定、優先業務の特定など | 防災訓練や施設の耐震化、不燃化など |
指 標 | 復旧のための時間、復旧レベル | 死傷者数、物的損害額 |
4. BCP対策で使える補助金とは
BCP対策で使える公的支援には以下のようなものがあります。これら支援は緊急事態が発生する前の段階で使える制度になります。
- 防災対策支援貸付制度
商工組合中央金庫が実施する補助金制度で中小企業かつ防災対策に取り組む事業者であれば貸付可能です。金利は10年固定貸出と15年変動貸出があり、防災対策に必要な設備資金の貸付制度になります。
- 中小企業組合等活路開拓事業
全国中小企業団体中央会が実施する補助金制度で協同組合が対象になります。補助金額は総事業費の10分の6以内であり、さらに6,000千円が限度です。中小企業による組合に対して貸付を行い、研究調査や将来のビジョン策定、策定の具体的な実現、新たな活路を見出す活動に対して貸付をおこないます。
- 社会環境対応施設整備資
中小企業金融公庫が実施する貸付で中小企業が対象となります。施設の耐震診断、耐震化工事、不燃化工事、データのバックアップ構築などに貸付をおこないます。政策優遇金利適用。
また東京都ではBCP実践促進助成金を実施しています。助成対象事業者になるにはいくつか条件がありすべてをクリアしなければなりませんが、条件を満たせば助成上限額 1,500万円(下限額10万円)の補助金が受け取れます。
5. BCP対策をされている企業の事例紹介
実際にBCP対策をされていた企業がどのような成果をあげているのか、ごく一部ですがご紹介します。
- 揺れの大きな地震に見舞われたが工場内のプレス機を固定していたので転倒せずにすみ、素早く生産を再開できた
- 事務所の耐震補強済みで大きな被害がなかった
- あらかじめ決められていた手順で伝言ダイヤル(171)を使い、比較的スムーズに従業員の安否確認ができた
- 原材料の代替調達工場を決めていたため、被災後数日で生産が再開できた
- あらかじめ協定を結んでいたほかの地域の会社で代替生産をおこない、クライアントに迷惑をかけることなく復旧できた
- 従業員はあらかじめ決めておいた交代制で出勤してもらい、大きな混乱はなかった など
もしものときを考えて事前に準備をおこなっていた企業はスムーズに復旧ができ、その後大きく飛躍した例もあります。
不測の事態でもすぐに地元住民や取引先の要望に応えた企業、事業所は大きな信頼を得ることができるのです。
6. BCP対策のご相談なら、株式会社ジャスト・エナジー
株式会社ジャスト・エナジーはBCP対策のなかでも災害時の電源確保・災害対応LPガスバルク対応しています。近年の数々の地震等の災害時に実証されましたように、自然災害に強く一番被害を受けにくいのがLPガス(プロパンガス)です。LPガスを燃料として発電を行うことで、事業所の電気や熱源の確保が可能となります。
また常用発電機ですと、電力料金の基本料金の基準となる最大電力(デマンド)時に発電した電力を使用することにより、最大電力値を低減させて基本料金削減につなげることも可能となります。
国も自然災害対策には注力しており、条件を満たせば導入費用の1/2〜2/3を補助金でまかない、設備を導入することも可能です。
BCP対策のうち、LPガス発電システムを導入して、自然災害時での電力・熱源の確保に少しでもご興味のある事業所様はお気軽に株式会社ジャスト・エナジーまでご相談ください。
策定にはフローチャートなどを使い基本方針を決めることから始まりますが、各事業所に応じた基本方針の選定から中核事業の検討、目標復旧時間や代替手段の選定などもアドバイス。
BCP策定だけではなく、施設の耐震化や不燃化、地震や水害に備えた設備対策、環境改善なども遠慮なくご相談ください。利用できる公的支援などについてもご説明します。
BCP策定をお考えの事業者様、お気軽に株式会社ジャストエナジーまでご相談ください。
[※1]出典 内閣府:防砂の情報ページ「地震災害」
http://www.bousai.go.jp/kyoiku/hokenkyousai/jishin.html