目次
1. そもそも省エネ法とは?
省エネ法とは、昭和54年(1979年)に制定された「エネルギーの使用の合理化等に関する法律」のことを指します。法律名が長いため「省エネ法」と省略されるのが一般的です。
この法律が制定された昭和54年当時は、中東地域の度重なる紛争などにより石油の供給が困難に。結果的に石油価格が高騰し、スーパーの店頭からトイレットペーパーが消えるといったパニック発生や世界的な不況へと発展しました。
この苦い経験をもとに「工場等、輸送、機械器具等の分野で限りある資源をより効率的に利用していく」ことを目的に省エネ法が制定されたのです。
1.1. 関係してくる業種とは
省エネ法では「工場・事業場及び運輸分野」においての使用者に直接規制がかかっています。
ではどのような業種に対して影響がおよぶのでしょうか?
経済産業省 資源エネルギー庁のホームページでは、事業者の区分と義務のなかで年度間エネルギー使用量(原油換算値㎘)3000㎘以上の事業所は「第一種エネルギー管理指定工場等」とされ、製造業等5業種(鉱業、製造業、電気供給業、ガス供給業、熱供給業)が指定されています。ではこれら製造業等5業種だけが影響を受けるのでしょうか?
製造業等5業種以外の業種であっても、年度間エネルギー使用量(原油換算値㎘)3000㎘以上発生する事業所は「第一種指定事業者」とされています。そのため製造業等5業種の事務所やホテル、病院、学校などの事業者もエネルギー使用量によっては影響が出てくるのです。
また年間エネルギー使用量(原油換算値㎘)3000㎘未満1500㎘以上の事業者は「第二種エネルギー管理指定工場等」と指定され、この事業者に指定されるのは全業種であり例外はありません。例をあげれば…
・農業 ・鉱業,採石業,砂利採取業 ・設備工事業 ・食料品製造業 ・飲料・たばこ・飼料製造業 ・繊維工業 ・木材・木製品製造業 ・家具・装備品製造業 ・化学工業 ・印刷・同関連業 ・パルプ・紙等製造業 ・石油製品・プラスチックやゴム製品製造業 ・鉄鋼業 ・非鉄金属製造業 ・鉄金属製造業 ・業務用機械器具製造業 ・電子部品等製造業 ・電気機械器具製造業 ・情報通信機械器具製造業 ・輸送用機械器具製造業 ・その他の製造業 ・ガス業 ・水道業 ・洗濯・理容・美容・浴場業 ・産廃廃棄処理業 ・通信業 ・放送業 ・飲食料品卸売業 ・各種商品小売業(ネット小売業者含む) ・不動産賃貸業 ・学校教育 ・医療業 ・宿泊業 ・飲食業 ・保険業 ・道路貨物運送業 ・国家公務 ・地方公務 など
業種を問わず工場や事業所があり、年間一定以上のエネルギーを使っている場合に省エネ法の対象となります。
2. 対象となるエネルギー
省エネ法では一定規模以上の特定事業者や製造事業者、特定貨物/旅客輸送事業者などに直接、間接の規制がかかっていました。
この省エネ法はこれら該当する特定事業者がどのようなエネルギーを使って事業をおこなっているかも重要となっています。なぜなら大規模事業者が風力、太陽光、地熱等の非化石エネルギーや、廃棄物から得られたエネルギーを100%使用している場合は省エネ法の規制にかからないからです。
省エネ法にはエネルギー効率アップだけではなく、再生エネルギーの使用を促進する目的も含まれているのです。
では省エネ法で規制の対象となっているエネルギーにはどのようなものがあるのでしょうか。
2.1. 燃料
燃料には原油及び揮発油(ガソリン)、重油、その他石油製品(ナフサ、灯油、軽油、石油アスファルト、石油コークス、石油ガス)など、原油やそれを精製したガソリン、石油製品があり、これら燃料は事業所や輸送分野で広く使用されています。
これら原油は昭和54年の石油ショックで大きく打撃を受けたエネルギーであり、省エネの対象として重要です。
ほかにも燃料としては分類されるものに可燃性天然ガス、石炭及びコークス、その他石炭製品(コールタール、コークス炉ガス、高炉ガス、転炉ガス)などがあげられます。
2.2. 熱
上記であげたエネルギーを使いそれらを熱源として、熱気、蒸気、冷気などの形で利用するエネルギーも規制の対象となります。
ただしこれらの熱源が、太陽光、地熱など非化石エネルギーである場合は規制対象外になります。
2.3. 電気
上記であげられた燃料を使って発電された場合は規制の対象になります。ただし熱と同じく熱源が太陽光や風力、水力、地熱などの非化石エネルギーであれば規制対象外となります。
3. 省エネ法が規制する分野
省エネ法が規制する業種は全業種におよびますが、なかでもとくにエネルギーを多く消費する業種が規制対象になっています。
では具体的にどのような分野の業種がその対象となっているのでしょうか?その業種をチェックしてみましょう。
3.1. 工場・事業場
工場・事業場でエネルギーを使用している者への直接の規制としては、以下のとおりです。
【工場・事業所】
・努力義務の対象者…工場等の設置者
・報告義務等対象者…エネルギー使用量年間1500㎘/年間以上の特定事業者等
特定事業者には、エネルギー管理者等の選任義務、中長期計画の提出義務、エネルギー使用状況の定期報告義務が科されます。
3.2. 運輸
運輸部門でエネルギーを使用している者への直接の規制は、以下をご覧ください。
【運輸(事業者)】
・努力義務の対象者…貨物/旅客輸送事業社
・報告義務等対象者…保有トラック台数200台以上等に該当する特定貨物/旅客輸送事業者
特定貨物/旅客輸送事業者には中長期計画の提出義務、エネルギー使用状況の定期報告義務が科されます。
【運輸(荷主)】(運送業だけではなく荷主にも省エネ法の規制がかかります)
・努力義務の対象者…荷主
・報告義務等対象者…年間輸送量3000万トンキロ以上の特定荷主
特定荷主には中長期計画の提出義務、委託輸送にかかわるエネルギー使用状況の定期報告義務が科されます。
3.3. 間接規制について
使用者への間接規制として、以下のようなものがあげられます。
【機械器具等】
一定規模以上の製造事業者に対し、自動車、家電製品、建材など32品目にかかわるエネルギー消費効率の目標を設定し、その達成を求める。
【一般消費者への情報提供】
家電製品などの販売事業者やエネルギー小売業者に対し、消費者への情報提供をおこなう(ただし努力義務)。
これら規制により一定規模以上の特定事業者や製造事業者、特定貨物/旅客輸送事業者、大口の荷主などに報告義務などが科されています。また以前制定されていた住宅・建築物の規制は2018年度から新法へと移動しています。
4. 省エネの歴史
日本の省エネルギー政策が始まったのは、一体いつからなのでしょうか?
最初の省エネ制作は昭和26年(1951年)の「熱管理法制定」に始まります。
この法律は省エネ法の前身となっており「工場や事業所で使用される燃料を熱源とする熱の有効利用を促進、さらに燃料資源の保全および企業の合理化に寄与する」内容となっていました。
昭和48年(1973年)には第一次石油危機により「石油危機に対応した緊急対策(燃料、電力使用自粛等)」が実施され、昭和52年(1977年)には第一回総合エネルギー対策推進閣僚会議開催。その後昭和54年(1979年)に省エネ法が制定され、熱管理法は廃止されました。
省エネ法はその後も環境基本法制定、地球温暖化防止京都会議、地球温暖化対策推進大綱 京都議定書締結(批准)などのタイミングで改正され今日に至ります。
4.1. 国内の省エネ政策の動向
昭和26年から始まった省エネ政策ですが、最近では2018年に省エネ法改正法案が閣議決定され6月に公布されました。最新の省エネ法では以下のような点が変更されています。
・複数事業者の連携による省エネ取り組みの認定
省エネ政策の実施により、各事業所での省エネ効果はだんだんと頭打ちになっています。
そこでさらなる省エネ効果を狙い、複数事業者が連携する省エネの取り組みを認定し、省エネ量を企業間で分配して定期報告することを認証するように変更されました。
複数事業者が工場や事業所の機能を集約することで省エネを実現した場合、省エネ効果を複数業者で分配することができます。
運輸事業者も同様です。共同運輸をおこなうことで省エネを実現した場合、省エネ効果を両社で分配することが可能になりました。
ほかにもエネルギー管理を統括しておこなうグループ会社に対して認定をおこない、まとめて報告することも可能になっています。
統括会社が一括して報告すればよいので、グループ傘下の会社は中長期計画の提出義務、エネルギー使用状況の定期報告義務などの書類作成の手間から解放されます。
5. 省エネの届け出は意外と簡単?
もし運営している事業所が年間エネルギー使用量(原油換算値)合計1500㎘以上の場合は特定事業者や特定貨物/旅客輸送事業者などになります。
報告義務のある事業者である場合は、事業開始時にどのような届け出が必要なのでしょうか?
この場合、年間のエネルギー使用量を国に申請し、特定事業者として届け出を行わなければなりません。
- エネルギー使用状況届出書
年間エネルギー使用量(原油換算値)合計1500㎘以上の場合5月末日までに申請し認定を受ける必要があります。すでに認定されている事業者は何度も申請する必要はありません。
- エネルギー管理統括者(企画推進者)選任・解任届出書
事業者単位のエネルギー管理を取りまとめる責任者の役割を負い、中長期計画のとりまとめや経営的視点を踏まえた取組の推進などをおこないます。事由が生じた日以降の7月末日が提出期限です。
- エネルギー管理者(管理員)選任・解任届出書
工場等単位のエネルギー管理者のことで、エネルギー管理士の資格が必要です。選任すべき事由が生じた日から6ヶ月以内に選任し報告しなければなりません。
- 中長期計画書
事業所全体の省エネの中長期にわたる計画書。あらかじめ決められた様式があるため、その様式に沿って作成します。締め切りは原則毎年度7月末日まで。
- 定期報告書
エネルギーの種類別使用量や機械器具の使用状況などを細かく報告します。国土交通省ホームページに定期報告書作成支援ツールが掲載されているので、それを使うのが便利です。毎年度7月末日が締め切りです。
様式名称 | 適用 | 提出期限 |
---|---|---|
エネルギー使用状況届出書 | 年間エネルギー使用量(原油換算値)合計1500㎘以上の場合、申請し認定を受ける必要があります。すでに認定されている事業者は何度も申請する必要はありません。 | 5月末日 |
エネルギー管理統括者(企画推進者)選任・解任届出書 | 事業者単位のエネルギー管理を取りまとめる責任者の役割を負い、中長期計画のとりまとめや経営的視点を踏まえた取組の推進などをおこないます。 | 事由が生じた日以降の7月末日 |
エネルギー管理者(管理員)選任・解任届出書 | 工場等単位のエネルギー管理者のことで、エネルギー管理士の資格が必要です。 | 選任すべき事由が生じた日から6ヶ月以内に選任し報告 |
中長期計画書 | 事業所全体の省エネの中長期にわたる計画書。あらかじめ決められた様式があるため、その様式に沿って作成します。 | 毎年度7月末日 |
定期報告書 | エネルギーの種類別使用量や機械器具の使用状況などを細かく報告します。国土交通省ホームページに定期報告書作成支援ツールが掲載されているので、それを使うのが便利です。 | 毎年度7月末日 |
こうしてみると必要な書類はかなり限られてきます。また書類作成支援ツールや決められた書式もあるため、担当者がきちんと社内で対応できる事務作業であると考えられます。
6. 省エネの定期報告
特定事業者などは毎年7月末日までに定期報告を作成し提出しなければなりません。
この定期報告は郵送だけではなくネットを使って申請することが可能です。
省エネ法・温対法電子報告システムを利用すれば申請の手間を省くことができる、事務手続きが楽になるため、経済産業省 資源エネルギー庁では電子手続きを推進しています。
定期報告では事業者内で1年間に使用された全てのエネルギーを、その熱源によって「原油(コンデンセートを除く)・原油のうちコンデンセート・揮発油・ナフサ・灯油・軽油・重油・石油アスファルト・石油ガス・石炭・都市ガス」などに分類し使用量を報告書に記入します。
このとき記入する単位はギガジュールを使用するのが原則で、キロリットルやトンなどの単位は不可です。
使用量をギガジュールに変換するための変換表が資源エネルギー庁に公開されていますので、参考にしてください。
6.1. 省エネの判断基準とは
昭和26年から国をあげて省エネを推進してきましたが、省エネの判断基準はどのように決められているのでしょうか?
産業トップランナー制度(ベンチマーク制度)と呼ばれる省エネ基準が発砲されており、これら基準を満たしているかどうかで各事業者の省エネ達成度をはかることができます。
例えば身近にある「通常コンビニエンスストア業(小型コンビニエンスストア業もあります)の場合、省エネの対象となるのは電気使用量です。
そこで店舗の年間電気使用量と店舗の年間売上高を割った値が845KWh/百万円以下であれば省エネ基準をクリアしているとみなされ、該当する事業者はベンチマーク達成によるS評価が与えられるのです。
このベンチマークは業界ごとに細かく決められているため、まずはこの基準をクリアできるかどうかが大きなカギに。
また省エネが停滞している事業者はBランクとされ、注意喚起文書送付や工場等現地調査、立ち入り検査、報告徴収など行政のチェック対象になります。
7. 省エネまとめ
日本はエネルギー消費世界第4位でありながら、エネルギー自給率はわずか約12%。
エネルギーのほとんどを海外に依存しています。
もし中東など海外で紛争が起こったら海外からのエネルギー輸入に大きな影響がおよぶ恐れがあります。
また二酸化炭素排出量削減目標を達成するため、化石燃料からの脱却を図り再生エネルギーの積極的な利用が求められています。
これらの状況を踏まえて、さらなるエネルギー消費量の削減が必要です。
今後は再生エネルギーの活用はもちろん、事業のさらなる効率化、熱エネルギーの効率的な(再)利用、より熱効率のよい設備の開発などが期待されます。
当社では省エネ効果が確認された50種類以上の省エネ商品がございます。
どうぞ省エネにお役立てください。
各種省エネに関してのご相談も受け付けておりますので、お気軽にお問い合わせください。